研究内容

微弱光⇒電流(増幅)

有機-無機ハイブリッド界面の精密制御による光電流増幅と高感度光検出


暗闇での像の可視化(視覚センサーや夜間カメラ)や生体が発する微弱な光の検出(生体イメージング)のためには超高感度な光検出技術の開発が不可欠です。本研究では、有機‐無機ナノ界面を利用した新しい増幅型光検出素子の開発を進めています。これまでに、高い光吸収能・波長選択性を有する有機分子と、高い導電性・加工性を持つ無機半導体を化学的に融合した界面構造の構築により、微弱な光信号を1000倍以上の電気信号として増幅する手法を確立し、低電圧駆動型の高感度光検出素子の開発に成功しました。

例えば、TiO2多孔膜表面に金属イオンと有機配位子を逐次的に固定化した一分子層の界面錯体を形成し、錯体の酸化還元能とTiO2の電気化学特性をヘテロ界面で融合します。この光受光層に紫外光を照射すると、界面にホールが捕集され、その結果、トンネル電流により1670倍の光電流増幅が生じることが明らかとなりました(ACS Appl. Mater. Interfaces 2018)。さらに、この界面にペロブスカイトナノ粒子を固定化することで、微弱な可視光を2900倍の電流信号として増幅することにも成功しています(J. Phys. Chem. Lett. 2019, 特願 2019-021974, 特願2020-093726)。有機分子と無機半導体のヘテロ界面を利用した本系は、非常に低い駆動電圧(<1V)で光を電流信号として増幅することができます。感度やノイズレベルにおいて、何100Vもの高い駆動電圧が必要となるSiやGaAsなどの光検出素子を凌駕する性能を達成しています。